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経済学部教員が綴る、情報マガジン。このコーナーでは、経済学部教員がリレー形式で、思いつくまま最近気になっているニュースや、お勧めの新刊、旅行記など、受験生や学部生に向けてのメッセージを発信します。

GISってなんだろう −コンビニの店舗戦略の空間分析−

2010年9月29日
現代経済デザイン学科 高橋朋一

GISってなんだろう思う人がほとんどだと思う。以前、青山スタンダードの授業でGISを知っている人と聞いたところ10人ぐらいでした。10人がどれくらい少ないかというと500人ぐらいの学生さんに聞いたので10/500ということになるので、認知率は2%となる。と言うことでもう少し多くの人にGISを知ってもらいたいと思うので、今回はGISについて少し紹介してみましょう。

GISとはGeographic Information Systemの頭文字を取ったもので、日本語では地理情報システムといいます。GISは1970年代にカナダで始められた土地資源マッピング・プロジェクトをきっかけに発展してきた技術です。

GIS の利点としては、デジタル化された地図の情報をコンピュータ上で文字や数字、画像などと結びつけることができる点です。たとえば、図のような人口、店舗、道路、鉄道、駅といった空間的な情報が個々に存在していたとします。これらの情報を紙媒体の地図で表示するには何枚もの地図を重ね合わせるので、非常に手間がかかる作業となります。また手作業で行うと情報の精密さが落ちる可能性が高くなります。それに対してGISは、デジタル化された情報を扱うことで簡単に重ね合わせることができます。さらに対象とする情報を入れ換えて表示することもできます。また、GISでは座標系をコンピュータ上で補正することができるため、正確な情報を保つことができます。そして、デジタル化された地図情報だけでなく、統計データやわれわれが独自に収集したデータなども取り込むことができます。これらのデータは数値化されたものが多く、統計ソフト等で処理し、結果をGIS上で分析することもできます。

地図の情報および統計・独自データを何重にも重ね合わせるためには、多種多様なデータを大量に取り扱わなければいけないが、コンピュータの高性能化により短時間で計算を行うことができるようになったことや3D表示のビジュアルアプリケーションの発展により、さまざまな視点から、データを分析することができるようになりました。

近年の情報の進歩に伴ってさまざまな分野でGISは利用されています。GISの利用されている一例を紹介すると以下のようなところで利用されています。

・ナビゲーションシステム(カーナビ等)
・エリアマーケティング(出店計画、賃貸物件販売)
・地域分析
  施設配置、施設立地(公共施設の公平配分)
  都市交通分析(渋滞解消、交通弱者への対応)
  都市人口分析(人口過集中の対策、人口流動)
  都市計画(まちづくり、再開発)
・自然環境保護管理システム(里山保護、人工的開発の生態系への影響)
・災害対策システム(ハザードマップ、避難場所・避難経路確保)

このようにGISは社会科学および自然科学の分野で幅広く応用されています。
もう少しGISを知ってもらうためにGISを用いて空間分析を行ってみましょう。

みなさんもよく利用しているコンビニってどんなところにお店を出しているのだろうと思ったことがきっとあるかと思います。それではGISを用いてコンビニの店舗戦略を調べてみましょう。

今回は青山キャンパス周辺2kmのエリアにあるコンビニについて調べてみます。
コンビニがある場所と考えてみると、駅の近く、道路沿い、人が多く集まるところといろいろと挙げられますが、ここでは駅の近くにコンビニがあるかどうかについて調べてみたいと思います。家を探すとき駅近っていうと歩いて10分ぐらいまでのところを駅近といいます。今回はコンビニを分析の対象としているので家の半分の5分を駅近として考えていきます。不動産屋の定義では成人男性は1分間に80m歩くとされているので、5分間歩くと400mが駅近の範囲ということになります。そこで、GISのバッファ分析を用いて駅近のコンビニがどれくらいあるかを調べてみましょう。

バッファ分析はGIS上で駅を中心に400mの円を描き、その円とコンビニの店舗配置を組み合わせて、円の中にあるコンビニの店舗を数え上げる分析方法です。

実際にGISを用いてコンビニの店舗配置と駅近の関係を図に示します。

この図では緑の点がコンビニの店舗配置となっていますが、バッファ分析の結果から駅近のコンビニは水色に塗り替えられています。水色のコンビニはというと132店舗あります。このエリアにコンビニが246店舗あるので、駅近のコンビニは54%ぐらいにあります。このGISの結果からコンビニは駅近にあるということが言えます。

このバッファ分析をチェーン店別に見てみると次のようなグラフになります。

このグラフからampm、ファミリマートの店舗数が多いことがわかります。このことはなぜだろう。その答えについてはみなさんがGISを実際に使って考えてみて下さい。