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Teacher's Cafe

経済学部教員が綴る、情報マガジン。このコーナーでは、経済学部教員がリレー形式で、思いつくまま最近気になっているニュースや、お勧めの新刊、旅行記など、受験生や学部生に向けてのメッセージを発信します。

現代経済デザイン学科では何を勉強するの? −消費税を例として−

2010年8月23日
現代経済デザイン学科 堀場 勇夫

経済学部に現代経済デザイン学科が誕生して3年目となります。学科の名前が長いので通称名「現デ」。何を学ぶ学科なのでしょうか。今日は、これから入学を希望される高校生や現デの1年生に、現デという学科では何を勉強するのという質問に少し答えてみましょう。現デでは公共コースと地域コースがありますが、現デの公共コースでは公共部門の活動について勉強します。その1つに税金についての話があります。今日は、その中で特に注目を集めている消費税についてお話しをしましょう。いまさら聞けない消費税ですね。ちなみに、経済学科ではこの問題を租税論で勉強します。

ところで、「消費税」というのはどんな税金と聞かれると、「さーて」と頭をかかえるでしょう。所得税は、給与から差し引かれる税金で、何となく分かるのですが、消費税となるとなかなかその正体が分からない。今、日本では、お店やレストランで、金額に5%上乗せされてとられている税金が消費税(正確には国の税金消費税と地方の税金地方消費税の合計)ですが、さて消費税とはどんな税金といわれると、答えに困ってしまいます。あまり良く分からないけれど、その割には低所得者に負担が重いといわれているので、あまり評判は良くない税金らしい。

消費税とは物とサービスの消費に対する税金、これを消費課税といいますが、この消費課税のひとつです。上に、消費課税全体を分類しました。結構面倒でしょう。消費課税のうちで、たとえば、たばこに課税されているたばこ税は、ひとつの品物だけに課税されている消費課税ですから、個別消費税と呼ばれています。
それに対して、なんでもかんでも全ての物やサービスの消費に対して課税する消費課税、これを一般消費税といいます。このうち、全ての取引段階で課税するものが、多段階税、そのなかで付加価値に課税するものが付加価値税です。税の専門用語では、消費税は前段階控除方式消費型付加価値税と長い名前です。つまり、どんな物やサービスの取引にも、どの段階でも、取引されるときいつもかかる税金です。もういやになりましたか。でも、これは名前の話ですから、あまり気にしなくても良いでしょう。ただ、上のように、たくさんある消費に対する税の一種類とだけ確認してください。

さて本題。この税金はどんな仕組みの税金でしょうか。

  A県 (10%) B県 (10%)
  製造 小売
売上 100 200 400
仕入 0 100 200
付加価値 100 100 200
  仕入税額 売上税額 仕入税額 売上税額 仕入税額 売上税額
  0 10 10 20 20 40
A県へ納税額 10 10  
B県へ納税額     20

いま、簡単化のため、10%の税率で消費税が課税されていることを考えましょう。また、この品物は、取引が上のように、製造業者、卸売業者、小売業者、消費者へとなされています。製造業者は自分のところで作って卸売業者に100で売上げました。だから、逆に卸売業者の仕入は100です。この品物を卸売業者が200で小売業者に売上げると、小売業者の仕入は200です。小売業者はこの品物をわれわれ消費者に400で販売しました。こんな取引を考えましょう。

このとき、各事業者は次のような簡単なことをします。卸売業者を例にしましょう。卸売業者から小売業者への売上額は200でした。この売上額に税率10%をかけた額が売上税額で、この場合20です。卸売業者は、この売上税額20を小売業者への売上額に加えた額220を小売業者から受け取ります。だから、仕入業者は小売業者から売上税額として20を受け取っています。次に仕入額100に税率10%をかけて仕入税額10を求めます。この仕入税額は前の製造業者にとっては売上税額ですから、卸売業者は製造業者に仕入税額10として仕入額に加えて110支払っています。すると、消費税を小売業者から20受け取って製造業者に10支払いました。つまり、卸売業者は仕入税額として製造業者に10渡し、売上税額として小売業者から20受け取っています。そこで、この売上税額から仕入税額の差し引いた額20-10=10が手元に残っていますが、この額を税務署に納税します。だから、小売業者から受け取った消費税額20を仕入業者に10、税務署に10払って、何も手元には残りません。これは、製造業者も小売業者も同じです。どの事業者も消費税については負担をしないことになります。

では、だれが負担しているのでしょうか。これはわれわれ消費者です。最後の小売業者が売上げた相手はわれわれ消費者ですが、消費者は400に10%をかけた40を小売業者、つまり店の人に消費税として支払っています。でも、製造業者、卸売業者、小売業者と違っていることがあります。つまり、次に売らないので、売上税額を誰からももらえません。40だけ支払いがなされるだけです。われわれを最終消費者といいますが、最終消費者は負担をするだけです。つまり、消費税の負担者となります。

ここで、不思議なことが起きています。われわれが負担したのは40でしたね。では、各事業者の納税額は、製造業者10、卸売業者10、小売業者20で、合計金額も40です。われわれが負担した額と納税額が全体で一致しているのです。何故でしょう。クイズとして残しておきましょう。

こんな税金が消費税です。でも、肝心な問題が残されていますよね。この税金は良い税金、悪い税金? やっと、問題にたどり着きました。この問題は、公共部門に関する租税の問題の1つです。これ以上は、大学の授業で聞いて下さい。