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2010.10.29更新

中国雲南省を旅して

私は、友人と二人で、今春3月に2週間ほど中国の雲南省を旅行しました。そんな私が見て感じた中国雲南省を、みなさんに紹介したいと思います。

中国にはいくつもの省がありますが、その中でも雲南省を中心に旅をしました。雲南省は中国南部に位置し、ベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を接しています。人口は約4000万人で、面積は日本とほぼ同じ広さです。
省都は昆明市。一年中春のような陽気のため、「春城」と呼ばれています。実際、私が訪れたのは3月半ばだったのですが、日本の3月よりも比較的暖かいと感じました。
中国国内には様々な少数民族が存在していますが、その数は56民族。そのうちの15民族が雲南省で独自の伝統を守って生活しています。
州の全体が雲貴高原にあり、平地はわずか6%。東部の高原地帯は標高2000m。西部には横断山脈などがあり、その間をメコン川の源流、爛滄江・怒江・元江などの河川が流れています。
東部の気候は温暖で一年中春のようですが、西部と北部は標高が高いので涼しく、冬は寒さが厳しいという特徴があると言われています。また南部は熱帯雨林地域で広がっています。

以下では、私が滞在した旅先の中でも特に印象に残っている2つの地域を紹介したいと思います。

緑豊かな棚田が見られる元陽
昆明市の南部バスターミナルから9時間、棚田の美しい元陽に到着します。住民の多くをハニ族が占めています。町中では、主に、女性が民族衣装を着飾って仕事をしていました。

みどころは、元陽周辺に広がる見事な棚田。元陽の棚田は世界の奇跡と言えるまでに壮観であると言われています。また元陽の棚田は12度から75度ほどの急斜面に棚田を作り、その段数がなんと5000段に達する棚田もあるそうです。そして棚田は谷間から海抜2000メートルの山上に伸びています。山の頂上から麓まで、一面に広がる棚田はみるものを圧倒します。

これほどの観光地でありながら、元陽は他の中国の観光地のような客引きや土産物売りはあまり入ってきていないのも魅力の一つです。

しかしながら、内陸部の山岳地帯であるため十分な教育を受けることができないと思われる多くの子供たちがたくさんいます。GDPも世界2位となり急成長を続ける中国ですが、一人当たりGDPがまだ低い中国の内陸部の実情を知ることができました。今後中国の課題は、このように経済の発展に取り残された地域の子供たちにいかに教育を授けるかではないかと感じました。

元陽の棚田は、現在、ユネスコの世界遺産に申請中で、もし世界遺産に認定されれば中国各地や世界中から観光客が押し寄せるでしょう。そうなれば、元陽の美しさの魅力が減ってしまうのではないかと心配です。なんとか、いまの元陽の美しさがこのまま残っていてほしいと思いました。ありのままの元陽の姿を味わうために、今のうちに機会があれば行ってみることをお勧めします。

世界文化遺産に登録された町並みを持つ麗江
昆明から北西に600キロ、標高は2600メートルのところに麗江はあります。2006年には高倉健主演の映画「単騎、千里を走る。」の舞台になった町です。また、住民はナシ族が占めます。古城は四方街を中心として街と路地が、四方へ延びています。 民家はすべて土木構造のかわらぶきの家、古色豊かで、1997年には“世界文化遺産”都市に指定されました。

麗江は中国でも人気の観光地となって、急速に観光インフラが整備され、2007年には年間433万人の観光客が訪れるまでになりました。麗江古城付近は元陽のようにありのままの状態ではなく、商業化が著しく進んでしまったために、古い町並みは残ってはいますが、一種のテーマパークのようなものになってしまっていたのがとても残念でした。

元陽と麗江をみて「観光産業」について考える
この2つの地域を実際に訪れて実際に感じたことは、観光産業は、日本を始め、世界的にもこれから成長性があり注目されている産業ですが、実際に商業化の影響を受けた麗江と、まだ商業化の影響を受けない元陽の二つの地域を対比することで、その良い面と悪い面をと実感することができました。「観光経済学」の観点から見れば、確かに世界遺産登録などにより、新たな観光需要を掘り起こすことでその地域全体を活性化させ、引いては生活レベルの向上につながるかもしれません。しかし、その経済波及効果によって麗江のように商業化が進んでしまったために、人混みが増え本来のその地域の良さを失わせてしまう可能性があることを考えなければならないと、改めて考えさせられました。

現在、日本観光を売り込むために“観光立国ナビゲーター”として人気アイドルグループ「嵐」の5人を起用し、訪日観光をPRしていくことや、「ビジット・ジャパン事業」のキャンペーンのキャッチフレーズ・ロゴ“YOKOSO! JAPAN”が、“Japan Endless Discovery”に変更になったことなど、外国人旅行者の訪日促進に関する努力がなされています。ここでも、日本の本来の魅力を考えた上での観光政策を行うことが、日本の良さをさらに際立たせることになるのではないかと思いました。

 

(文・写真:U. Yuichirou)