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我々の住む日本では、本当に100年に一度の金融危機だったのか?

経済学科 白須洋子
l012毎日の新聞を見ていると、「金融危機」などの文言がよく目に付きます。さらに、「100年に一度・・・」とも言われるようです。今から100年前と言えば1909年。ずいぶん大昔ですね。“危機”という言葉さえ物騒なのに、“100年に1度”と言われると、スーパー物騒なイメージですね。しかし、本当に、我々が生活している日本の市場は100年に1度の金融危機なのでしょうか?

まず、日本の金融市場で起こっていたことを振り返ってみましょう。金融市場で取引されている商品には主に株式・国債・社債などがあります。このうち、社債の動きを見ると、リーマンショックが起こった2008年と、山一証券等が倒産した10年前の1998年とでは非常に似た現象が起こっています。低格付社債の利回りが大きくジャンプしているのです。以下で詳しく説明しましょう。

社債とは、資金の必要な企業が自らの信用を基に発行した債券です。企業は自らの信用力を明らかにするために格付けを取ります。格付けとは、最も信用力がある企業の社債(=倒産しない企業)をAAAとし、以下、倒産確率が高まるにつれAA、A、BBB・・・となります。信用力のない企業(=倒産しやすい企業)の発行する低格付社債を購入した投資家にとって、企業が将来も安定的な利払いを約束どおり行ってくれるのかどうか不安がありますので,低格付け社債は投資家が不安に思う分だけより高い利回りとなります。ハイリスク・ハイリターンです。市中で売買されている低格付社債の代表例はBBB格社債です。

企業の倒産は、企業経営が上手くいかない等の以外の原因でも起こります。企業の資金繰りが悪化した時です。通常、企業は銀行等から借金をして原材料を購入し、製品を製造・販売した後に売上金としてのお金が入ります。しかし、もし、景気の悪化等で銀行も将来に不安を持ち企業にお金を貸してくれない場合、企業は必要なときに必要なお金が得られないわけですから、生産活動は停止してしまいます。これでは困るので、企業は銀行がお金を貸してくれないかもしれないと思うとき、将来に備えて、お金に換金し易い安全な債券(国債や高格付債)を事前に購入したがります。逆に、お金に換金し難い低格付債は人気がなくなります。そうすると、低格付債であるBBB格社債を持っている投資家の中に、将来、お金換金できないor売ることができないという不安が急激に高まり、BBB格社債の利回りは(他の格付けに比べ)驚くほど高くなってしまうのです。リーマンショック後の各国の金融市場ではこのような現象が起こっています。

ここで気をつけなければならないことは、1990年代後半の日本でも全く同じような現象が見られ、今回のリーマンショックが初めてではないということです。新聞やテレビニュース等では、そのように正しく報道されているでしょうか?我々の住む日本では、100年に1回の出来事ではなく、たった10年前起きた、将に10年に1回の出来事だったのです!欧米諸国よりシビアな現象ですね。まず、このことを正しく認識する必要があります。しかしそれ以上に重要なことは、我々はたった10年前の出来事にも関わらず、その教訓を今の危機に生かせているか(?) ということです。経済現象を冷静に分析・活用できる科学の力が必要なのです。つまり、きちんと経済学を学んだ者は、マスコミのジャーナリスティックな報道に単に踊らされるのではなく、科学の目から現実をシビアに直視・分析し、さらに冷静な判断力を持って将来への有効な処方箋をうつことが求められているのです。次の10年に向け、同じことを無駄に繰り返さないためにも・・・。学生諸君、君たちへの期待は大きいのですよ!