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年末年始の報道から

経済学部 中村まづる
l0202010年が明けてすでに1ヶ月が過ぎようとしています。昨年の今頃は、金融危機から世界的不況へと急激な経済状況の悪化に見舞われていました。政府は大型の景気対策を打ち出し、夏には経済成長率もプラスに転じました。政治でも歴史的な政権交代が行われ、大きな政策転換も期待されました。ところが雇用や経営には依然として回復の兆しが見られず、デフレーションの影響も危惧されています。

果たして、今年はどのような年になるのでしょう。就職活動を迎える頃には景気が良くなっていてほしいと思うのが皆さんの本音かもしれません。テレビや新聞・雑誌などのマスコミでも年末年始にかけていろいろな見通しが出ました。最近の若い人たちには、インターネット経由の情報の方が馴染みやすいでしょうか。

昨年の暮れも押し迫った12月25日に財務省が2010年度予算案を発表しました。2000年代を通じて80兆円台だった一般会計の当初予算は92兆円に上ります。税収は37兆円と昨年より10兆円近くも落ち込み、その他の収入を含めても44兆円という空前の公債を発行することになります。国の借金は、これまで日本の国民がほとんどを支えてきました。ところが、12月30日の日本経済新聞には、このまま財政赤字を重ねていくと2020年には政府債務が国民の資産総額を超えてしまうと報道されました。日本の政府は先進国の中でも群を抜く規模の累積債務を抱えています。景気対策だけでなく財政再建への道筋を示すことも今後は必要となります。

ところで、日本の人口構成は、1940年代後半に生まれた、いわゆる団塊の世代の層が最も厚く、この世代の引退とともに急速な高齢化が進むことはかねてから予測されてきました。今後は人口の減少も進んでいきます。現在、定年を向かえている団塊の世代が75歳以上となる2025年頃が高齢化のピークとなり、その子供世代にあたる1970年代生まれの団塊ジュニアが高齢層となる2040年から2050年頃には、世界に類を見ない超高齢社会に至ると予測されています。

これまで現役として租税や社会保険料を負担してきた世代が年金や医療の受給者に転じると、社会保障制度の役割はますます高まって行きます。予算案では社会保障関係費が一般歳出の5割を占め、主要経費が削減される中、前年比で突出した伸び率を示しています。それでも、日本の社会保障給付費の国民所得に占める割合はOECDに加盟する先進諸国の中でも平均以下の水準です。景気動向により生活困窮者が社会問題となり、実質的なセイフティ・ネットとしての機能を十分に果たしていない現状です。

民主党はマニフェストに添って、予算の中でも医療、介護、子育てなどへの支援を掲げています。しかし、いずれも短期的な景気対策ではなく長期的視野に立った国家戦略として築いていくべき課題です。社会保障支出の増大は財政赤字の最大の圧力となりこのままでは将来世代の負担となります。社会保障制度への国民の期待に添いつつ、必要なときに必要な給付やサービスを受けられるように見直しを行うという困難な舵取りも必要となってきます。

負担と給付の増額によって制度を拡大するには、ヨーロッパ並みに20%前後の消費税率の引き上げが必要になるでしょう。給付と負担をめぐる世代間不公平が広がることも避けられません。民主党は、消費税の引上げ行わず、200兆円を超える特別会計の見直しで財源は確保できると主張してきました。年明けの1月7日には、埋蔵金の洗い出しを表明しました。シナリオ通りに事が進むかどうかで、国の枠組みにも、国民の生活にも大きな影響が及びます。

l019例えば、今年、成人となる1990年生まれの人は、2025年には35歳の働き盛りでしょう。家庭を持ち子供の将来も気にかかる頃かもしれません。そして、2040年には今のご両親の年代、2050年には60歳を迎え老後を考える頃でしょう。外に目を向ければ、近年、成長の目覚ましい、BRICsと総称される中国、インド、ロシア、ブラジル等が2040年頃には現在の先進諸国に追いつき、一気に追い越して世界でも指折りの経済大国に名を連ねると予測されています。世界の経済の様相も今では想像もできないくらい大きく変わっていることでしょう。

この20〜30年の間がそれに至る変化の時代と考えれば、まさに、皆さんが21世紀の前半を支える世代ということがおわかりいただけるでしょう。昨年の大晦日に、政府は2020年までに平均で名目3%、実質2%を上回る成長目標を掲げたと報道されました。それが実現できれば、経済の成長とともに税収も増え、政府債務も徐々に軽減していくことも期待できます。景気が安定成長路線に乗れば、消費税率の引上げによってより充実した福祉も望めるでしょうか。ICTや環境関連の産業が新たな牽引力となり経済大国として生き残ることが出来るでしょうか。いずれにしても、これから社会に出る「将来世代」の皆さんに日本の行方がかかっていることは確かです。